農家の方の困り事を直接ヒアリングし、ハンズオンで学んだ技術の活かし方を考えたアイデアも
今年の徳島のイベントはハンズオン。テーマは「兼業エンジニアに役立つハンズオン」です。
会場である徳島県神山町は、神山バレーと呼ばれITに携わる人も多く、その中に兼業で農家をされている方もいらっしゃいます。
今回は、そのような兼業農家の方に役立つサービスアイデアを考える、またはそのために必要なAPIを習得する事を目的に開催。様々なデータを保存しておけるデータベースを簡単に作成できる「kintone」と、IoTソリューションに対応したリアルタイム分析を実行できる「IoT Hub」と「Stream Analytics」について学びました。
本レポートでは、イベントで学んだ内容や発表されたアイデアについてお届けしたいと思います。
それでは早速いってみましょう!
■インプット
今回は兼業農家の方に役立つサービスアイデアを考えるためのハンズオンだったため、アイデアソンの前に、チーノ農園 の加藤さんから、移住して農業を始めるにあたって困ったことや、害虫や害獣などで困っている課題などについて共有を頂きました。
加藤さんは、神山町に移住してきた有機野菜の生産者です。もともとは携帯ソフト屋に勤めており、農業の経験ゼロからのスタート。
農家住宅に引っ越したので器具などは困らなかったけれど、他は困ったことだらけ。
・旬さえもわからないので、いつ何を植えたらいいのかわからない
・どの種がどの土に合うのか?もわからない
・種をまくタイミングがわからない
同じ畑でも場所によって植えなければいけない種は違うそうです。なので全てが博打。try&errorで学んでいくしかない状態。試してみた経験から、土、季節、水、種などの相性を理解していき、やっと4年間の経験値が溜まってきたそうです。
地元の人は生えている草などで土の酸性や粒度を理解していて、どのパラメータでどの種が一番育つのかなどを経験でわかっており、種をまくタイミングも”明日雨だから”などあるようです。
そんなお話から
・種のデータベースがあり、土地や環境のデータが有れば新規就農しやすくなるのでは?
・気象状況に関してのデータもわかると助かる
・地温や湿度、その土地の特性などわかったら何をどこで植えるのかわかる
・種の性質がデータベースにあると助かる
などの話があがり、
「データなどがあれば、4年かかって見極めたことを、2年目で見極められたかもしれない。自分たちみたいな人ほど、ITの力が発揮できるのではないか? 」
という言葉がありました。
また、自然への対策が無防備で、害獣などの戦いに関しては知識すらなく、とても苦戦しているとのこと。
彼らも生きていくためにtry&errorをしていて、人が来ないことを分析し、一番リスクが低いときを狙ってくるそうです。例えば車がでていくと来るなど。
また、何か対策をしてもすぐに慣れてしまう(学習する)ので、変化も必要。
ただ、人間がいることがわかれば近づいてこないので、人間が先手を打てることができたら嬉しいとのことでした。
そして、この課題を解決するために学んだIT技術は、様々なデータを保存しておけるデータベースを簡単に作成できる「kintone」と、IoTソリューションに対応したリアルタイム分析を実行できる「IoT Hub」と「Stream Analytics」になります。
■kintone(サイボウズ)
https://kintone.cybozu.com/jp/kintone
kintoneはデータベースやワークフローのプロセス管理などに利用される、チームワークプラットホームです。コミュニケーション機能では、コメントが付けられたり、変更履歴が見れたり、プッシュ通知を設定することの出来ます。
特徴
ドラッグアンドドロップで開発でき、APIによる拡張性もあります。
ビジネス用途だけでなく、ハッカソンではいろんなところで利用されています。
・フロントエンドとして 例:Twilioで電話するボタンなど
・データベースとして 例:kintoneのデータをPepperが話すなど
詳しくはこちらを参照ください → http://bit.ly/kinhack
ハンズオン
本日のハンズオンのお題は以下になります。
①アプリ作成②REST API
・アプリ作成
まずはkintoneにアクセスしてポータル画面を開きます。Kintoneポータルは、通知やお知らせを使用して、各人のタスクや連絡や、プロジェクト単位での情報集約が可能な画面。
今回はゼロからアプリを作るので、まずはアプリの「+」ボタンをクリック。
はじめから作成をクリックしたら、ドラッグ&ドロップでフォームを作っていきます。作ったら保存を忘れずに!
次に先程作成したフォームの一覧画面を作ります。
フォームタブ横の一覧タブに画面を切り替え、「+」をクリック。そしてドラッグ&ドロップで一覧で見たい項目を設定します。こちらも作ったら保存することを忘れずに!
できたら、アプリを公開します。公開されたら、適当にデータをいれてみましょう。
このように、見る人に合わせた一覧を簡単に作れるようになっています。
(例:担当者に合わせ用途に応じた一覧のカスタマイズ、見る期間を指定など)
・REST API
次はRESTAPIに挑戦です。
まずはhttps://cybozudev.zendesk.comをブクマしてください(何度も使います)。今回は取得、登録、更新、削除のなかで、「取得」にトライします。
事前準備としてPostmanをインストール。ポストリクエストをGUIで編集して送信できる便利なやつです。
事前準備は以上で、ここからが本番です。アプリIDを確認して登録されたデータ取得に挑戦します。
レポードクリック→レコード取得(GET)をクリック→レコードの取得(1件)をクリックして、リファレンスを確認します。そして、アプリIDやレコード番号を指定してリクエストを作成し、postmanで送信します。「ログインしてください」というメッセージが表示されれば成功です。
kintoneRESTAPIではパスワードかトークのいずれかの認証が必要になるので、今回はトークンで認証するように設定します。まずはトークン取得から。
「アプリ設定を変更」→APIトークンをクリック。取得時にアクセス権を設定します。
リクエストヘッダーに先程取得したトークンを指定し、再度postmanで送信します。
以上でハンズオンは終了です。
最後に、有志によるユーザーコミュニティが運営しているkintoneCafeについてのご紹介。kintoneCafeはまだ徳島では開催してことがないそうなので、皆様是非!!
そしてエバンジェリスト制度の紹介です、kintoneに可能性を感じてくれるエンジニア経験者に与えられ、kintone愛がある人を募集しているそうです。
■IoT HubとStream Analytics(日本マイクロソフト)
・IoT Hub
・Stream Analytics
マイクロソフトは様々なサービスを提供しており、BigData IoT分析提供もしています。推奨アーキテクチャは、IoT hub経由で、デバイスとクラウドを接続するというもの。
今日はデータ実時間分析サービス経由でストレージにいれるところまでやりたいと思います。
ちなみに、IoT×農業の事例として、あらゆるデータをセンサリングして、アプリ経由で野菜の成長環境を確認する「みどりクラウド」さんをご紹介いただきました。
ハンズオン
今日はこちらの教材(モノの接続からデータ分析まで)のStep1〜5の簡易版を実施予定です。
最初は、センサーデータをIoThubに送信するところからはじめます。
まずはMicrosoft Azureにログインしてダッシュボードにアクセス。ダッシュボードを開設したら、リソースグループを作ります。ダッシュボードはチームで共有して管理することができます。
アナリティクスから、IoThubを立ち上げます。
名前を決めたり、利用する枠を選択したり。F1フリーを選択し、リソースグループなどを選択し、セットアップをしていきます。
続いてデータをためるストレージを作ります。Stream Analyticsという汎用的なサービスを利用します。
時間がなくなってきてしまったので、ここからはデモです。
Stream Analyticsにて、入力データひとつ、出力一つというデモをやります。
クエリを設定すれば、入力データを元に出力データを変換することができます。
次は、Githubにてオープンソース公開されているDevice explorerを使ってデバイスとつなぎます。
そして、デバイスIDやGUIDなどをもとに紐付けを行います。
最後は、今回の実習内容と補助資料をご紹介いただきました。
以上で、日本マイクロソフトのハンズオンは終了です。
当日のtogetterの方が詳細にイベントの様子を中継しているので、わからない方はこちらを要チェック!
→つぶやきまとめ http://togetter.com/li/1040897
■ミニアイデアソン
インプットタイム、ハンズオンが終わったら、チームにわかれてアイデアソンです。
今日学んだことが何に使えるのか?をチームに分かれて考えます。
こちらのチームは加藤さんに毎日の作業についてヒアリングしていました。季節毎にある作業と、毎日する作業とあるそうです。
そして3つのアイデアが発表されました。
①チーム名:ファームキーパー
遠隔で農業参加できる獣害のゲームです。ポイントに応じて、守った野菜をもらうこともできます。
②チーム名:IoK(Internet of Kakashi)
かかしが、自動で水やりをします。また、カメラがついており、獣がきたら踊ったり光ったりすし、獣害対策もします。
③チーム名:チーム愛菜家の作ログ
ベテランのノウハウデータを集め、農家同士も助かり、新人農家も助かり、孫にも伝承できます。
みんなの発表の後、目を伏せてもらい挙手制でベストアイデア賞を決定。
ベストアイデア賞は「チームIoK」でした!おめでとうございます。
(副賞はアイデアソン中に提供しようとおもってたお菓子一式w)
MshupAwardsとは?
最後にMashupAwardsについて簡単に説明させてください。
今回のイベントはMashupAwards2016の一つのイベントとして開かれました。
MashupAwardsは賞金総額約500万円の開発コンテスト。APIを提供している多くの企業がパートナーとして参加しており、様々なAPIをMashupさせて作品を作るコンテストでもあります。参加しているパートナー企業の数だけ賞があるので、賞が多いことでも有名。(応募すれば打率は高い?)
今は「自由なモノづくり」を推奨しており、APIの利用は必須ではありませんが、企業の方と二人三脚でモノづくりを楽しむ醍醐味はそのまま残っています。
審査基準は①アイデア②完成度③デザインの3つで、事業性は入りません。「あったらいいな」を形にしたり、仕事では利用しない技術にチャレンジして応募したり、活用方法は十人十色。
今年も応募がはじまり、今は絶賛応募期間中。〆切は11/21(月)23:59なので、それまでに是非何かご応募ください。
最優秀賞はトーナメントの勝ち上がり方式で決まります。応募は必ずオンライン登録が必要になりますが、オンライン審査だけでなく、ハッカソンや一次プレゼン予選(Mashupバトル)など、リアルなイベントに参加して勝ち上がる道もあります。
徳島では、一次審査である1stBattle(プレゼン審査)が11/21(月)に開催されます。
勝ち上がって2ndBattleに参加すると、全国の猛者とたくさん知り合いになれます!(ここが一番楽しい場です)
みなさまお疲れ様でした。(一人だけガチの空気イスの人がいます!)
今回のイベントのTwitterのつぶやきと写真をみていただくと、より雰囲気もわかるかと思います。
→つぶやきまとめ http://togetter.com/li/1040897
→イベント写真 https://www.flickr.com/photos/100125183@N08/albums/72157674649103291
蛇足
加藤さんのお話の中では「パラメータ」という言葉がでるなど、IT脳を持ち合わせていることが伺えました。加藤さんのようなIT脳をもっている農家の方が増えたら、課題解決するサービスがでてきた際でも、うまく使いこなせるだろうなーと感じました。
また、農業はとても経験値が大切な職業です。農業のデータ化は、現在の農家の方の効率化だけでなく、新しく農家を始める人達のハードルを下げ、農業人口を増やすきっかけにもなるはずです。
農業のIT化の話は様々なところですすんでいますが、kakaxiのような畑などの状態の可視化や記録のような製品が多いようにも思います。
今回お話いただいたようなノウハウデータを蓄積することも、ノウハウの継承という点でとても大切なことだと改めて認識しました。
今回のお話で個人的に一番興味深かったのは、獣害対策におけるお話です。
獣害対策も、各地域を回っているととても重要な課題です。彼らも生きることに必死なのでいろんなことを学び、追い返すことに一度成功しても、同じ事の繰り返しではバレるということです。動きで追い返すのであれば、ランダムな違う動きが必要なのです。人間に近いロボットが作られれば、状況に応じて違う動きもできるとは思いますが、結局生死をかけている敵には、最終的には人間とロボットを見分けることができるような気もしています。
「田舎は生死に近い」と友だちが言っていましたが、今回のお話でもそれを感じました。
最後に、準備のために少しはやめに会場につき、みんなで渓流をみながら食べたお弁当がとても気持ちよかったです。
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