耳鼻科医がbotを作ったり、開発きっかけは入院など、「自分で」手を動かして課題を解決する作品多数
ヒーローズ・リーグのCIVICTECHリーグ決勝は、日本のシビックテックイベントの中でも群を抜いてテクノロジー度の高いイベント。テクノロジーで課題を解決する作品が応募されているので当たり前といえば当たり前なんですが、その「想い」もすばらしいものばかりなんです。
今年は、耳鼻科医が技術を学んで自らbotを開発した作品、入院をきっかけに開発された作品など、「課題の自分事化」を特に感じました。
「この中から1つ選べなんで無理ゲー。どの作品も素晴らしい。」と審査員に言われ審査は難航。本来はこの場でヒーロー作品のみが選出される予定でしたが、急遽審査員特別賞が2作品選出されることになったほどです。
そんな、CIVICTECHリーグ決勝で発表された作品をすべて紹介します。発表された作品はこちらの9作品。
- 未来ゴミ箱
- DX(デラックス)かみしばい
- 急性中耳炎の重症度や推奨治療が分かるLINE Bot
- 自転車事故を無くしたいっ! Bicycle Scouter
- busters
- 呼びかけトントン
- ハイパー筋電位電動車いす(テンプラー筋電位if)
- SNS用画像生成ツール
- E-MedicineBox
まずはヒーローになった作品、次に審査員特別賞の2作品を紹介し、全作品を紹介したいと思います。
CIVICTECHヒーロー
ハイパー筋電位電動車いす(テンプラー筋電位if)
歯を噛みしめるときに発生する筋電位により操作する筋電位マウスを開発した、筋電位電動車いすのインターフェイスシステム。手足を使わずに操縦できるので、まるで魔法のよう。この作品は、課題保有者と二人三脚で開発しているとのこと。
課題保有者自身が、筋電で操作しているとは思えないスピードやスムーズさで操縦している動画を、是非みていただきたい。
この作品は完全動画プレゼンでヒーローを獲得(HL史上初めてじゃないかな)。その動画の最後に伝えられた「開発者」の想いを最後にお伝えしたい。
「エンジニアの方にも是非障害を持った方と関係を持ってもらいたい。エンジニアとしては得るところが非常に多いと思います。本人も違う職種の方と会うことは良い刺激になると思いますので是非関係をもってほしい。
審査員特別賞(2作品)
自転車事故を無くしたいっ! Bicycle Scouter
自転車のカゴに搭載して歩行者をリアルタイムに検知し運転者に音声警告してくれる機器「Bicycle Scouter」。「自転車事故を無くしたいっ!」という強い願いから開発された。
開発途中での発表でしたが「つくりきってしまったところに圧倒されました。この先に未来があるんだな。こんなにも素敵な粗削りはないなと。」という審査員コメントもあるとおり、「想い」と「実行力」を感じた作品です。
急性中耳炎の重症度や推奨治療が分かるLINE Bot
小児急性中耳炎の診療ガイドライン(2018年-日本耳科学会)に沿って、急性中耳炎の重症度と推奨治療が短時間で簡単に分かるLINE Bot。
「最近のヘルスケアの技術革新の中で、越境が大事。この作品は、4ヶ月でLINEbotをつくったときいて、もっとこんな動きがひろまってほしい」という審査員コメントもあったように、エンジニアが作るのではなく、医者自らが学び、テクノロジーでの解決を試行錯誤しているというアクションに、多くの人がそんな人がもっと増えていく未来への期待を感じた気がします。
ファイナリスト作品
未来ゴミ箱
維持費を自分で稼ぐ未来のゴミ箱。LINE Payで決済しゴミが捨てられ、満タンになったことを検知(距離センサー)し、ステーションに捨てに行くなどの機能も搭載。
「着眼点と作り込みのヤバさはすごい」という評価いただいてました。様々なAPIをMashupしている作品。
DX(デラックス)かみしばい
“めくられていくというフィジカルな体験”や”演者との生のやりとり”を残しつつも、センサーを設置することで、インタラクティブな新しい紙芝居体験を実現。
港区の防災訓練で実際に活躍したというこの「DXかみしばい」。個人的には、テクノロジーの力で、古き良き文化をアップデートし、さらに楽しくしているのがとてもよかったです。それだけでなく、インタラクティブな体験は理解を促進するそうです。
呼びかけトントン
“特定のキーワード(自分の名前、ニックネーム、「すみません」等の呼びかけ)を音声認識エンジンで感知した際に、装着者に振動で伝え、呼びかけられた事に気付けます。
聴覚を触覚に変換するというアイデア。できないことがあれば、できることに変換すればいいという考え方が、なんか人生へのメッセージにも聞こえましたw(勝手な自己変換)。「デバイスの小型化もすごい」という評価もありました。
SNS用画像生成ツール
すぐに画像を作れるツール。災害時などの自治体サイトで「ただ文字を変えたい。」それだけなのに、Photoshopなど画像生成のツールをいじれる職員が常にいるわけではありません。そんな課題を解決するツール。
githubに公開されているので、データをダウンロードして設定ファイルや画像を変更などするのがベース。
「現場にフィットしたソリューションのだしかたがすばらしい。そこから大きな社会課題につなげるという流れもすばらしかった。」という審査員コメントも。
E-MedicineBox
薬の飲み忘れを防ぎ、さらに薬を飲んだかどうかを確認することで薬の二度飲みを防ぐ作品。
とても実用的で、切実な想いを感じたこの作品。食後ならまだしも、「食後30分後に薬を飲まないといけない」なんて、とてもツールなしじゃできないと思ってしまう私。まさにテクノロジーの力でソリューション解決。
「個人の生活の苦しさに対して、社会へのポジティブなメッセージを感じた」との審査員コメントもありました。
busters
ゴミを荒らす犯人はカラス。カラスは強い光に怯える習性があるので、その習性を利用し、作成したゴミ収集所に集まるカラスを追い払うためのデバイス。
電源コードレスで屋外での給電および充電可能、アタッチメントの交換で様々な環境に設置できるなど、細かいところがよく考えられてました。「完成度の高さがやばかった」という審査員コメントあり。
以上が、MAリーグの決勝審査会に参加したエンジニアが選んだトップ10作品になる。
当日のつぶやきをみると、プレゼンを聞いていた参加者のナマの声が沢山みられ、雰囲気も感じられると思うので、是非みていただきたい。
そして写真も多くあるので、気に入った写真あがれば、SNSアカウントのプロフィールなどで使ってくれると嬉しいな。
・togetter:「課題保有者に寄り添って作られた筋電車椅子がCIVICTECHヒーローに! #ヒーローズリーグ」
・Flickr:CIVICTECHリーグ2019決勝
今回のCIVICTECHヒーローは、以下3名の審査員により選出されました。
左から
・伊藤 昌毅氏|東京大学 生産技術研究所
・佐藤 拓也氏|Code for Ikoma / Japan / YuMake合同会社 / CIVIC TECH JAPAN
・鎌田 篤慎氏|ヤフー株式会社 技術戦略本部 テクノロジーインテリジェンス室 室長 *MA2から見守ってくれているMAの重鎮
蛇足
CIVICTECHヒーローの決勝は、毎年本当に感心をさせられます。そして面白い。特に今年は、自分が感じた課題を、自分の熱意でカタチにした作品が多く見受けられた気がします。
また、今回ヒーローになった作品は完全動画。関西予選やXUIリーグの決勝で実際にプレゼンや実機を持ってきており、その機会を活用。
すべての作品に「想い」が乗っていましたが、この作品はその上に長年継続開発してきた「完成度」も兼ね備えていたことが決め手になったのではないかと思います。
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